非凡を愛す

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思えば私は、無意識に平凡を愛していたのだろう。二十余年の人生を思い返し、唐突にそう自覚した。まだ意識もおぼろげな幼いころから、私は可もなく不可もなく、まさしく平凡な存在だった。特別運動や勉強ができるわけでもなく、人見知りでも人気者でもない。ある空間になんとなく一人はいるような、そんな存在。父と母も、探せばどこにでもいるような、完璧ではないけれど愛着を覚えるくらいには大切な人たち。でも私はそれで構わないと思っていた。波乱万丈なドラマなんてないけれど、それでも毎日がそれなりに楽しくて、それなりにつらくて、それなりに幸せだったと思う。きっとこれからもそうなんだろうな、そうだったらいいなとさえ思っていた。
 なぜこんな風に突然長くもない人生を回想し語っているかというと、この思考に至ったときの私が置かれた状況は、およそ私がこれまで経験した「平凡」とは似ても似つかないものだったからだ。
「凪ちゃん……?」
 目の前から聞こえる声が私の現実逃避を阻む。さわやかで落ち着いたその声は、こんな状況じゃなかったらもっと素晴らしいのにと惜しく思えるほどだ。声の持ち主は私の目の前にいる。彼の名前は海。かれこれ五年の付き合いになる私の恋人だ。
 そして驚くべきことに、彼は……宇宙人、らしいのだ。
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