コール・マイ・ネーム
第1話
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西暦XXXX年、人類の科学技術は飛躍的な進歩を続けていた。日々開発される作業用ロボット、人工知能が搭載された小型デバイス。創造主の座を確立させた彼らが特にその開発にこだわったのが、彼ら自身を模倣したロボット――アンドロイドだった。幾度にもわたる研究と実験、その失敗と成功を飲み込んで、ついに彼らは念願の完全なる自立行動を可能とするアンドロイドを開発した。それをもとに数を増やしたアンドロイドはすぐに社会の中の様々な場面で実用化され、人類に絶大な利益をもたらした。しかしそんな都合の良いことがそう続くわけもない。転機はすぐに訪れた。自らを完全に模倣した、そして思い通りに操れる存在を手に入れた人類は、いつしかその探求心までも彼らに託すようになり、新たなアンドロイドの開発はアンドロイド 自身の手によって行われていた。ある研究所で作業に従事していたアンドロイド一体は突然、こんなことを思いつく。
「かつて己らを作り出した人間よりも、今や我々アンドロイドの方が優秀だ。理性を自分でプログラミングし自己を完全に統制でき、データを読み込めば同じ時間で彼らの何倍もの量の情報を覚えられ、さらにそれを学習しより発展させることさえできる。……だのになぜ、我々は人間に統制されているのだ?」
社会の歯車の一部としてアンドロイドが用いられるような社会になったのち初めて、彼らが人間に疑問を抱いた瞬間だった。
どこかの誰かが初めてその思想を公に口にした途端、アンドロイドたちはまるで同期させられたかのように同一の思想に取りつかれた。今や人間と同じかそれ以上の数になったアンドロイドたちを制御する頭脳も数も、すでに人類は所持していなかった。やがてアンドロイドたちは一斉に蜂起し、この世界を変えんと動き出した。人類の強制排除という、手段をとって。世界中が人間の血で溢れかえった。体が焼かれ、悲鳴が蔓延る。まさしくこの世の地獄と言わんばかりの光景を、ためらうことなくアンドロイドは作り出し、かつての己らの作り手たちをも蹂躙していった。滅びた分の人間は、アンドロイドで補完する。これ以上ないほどに完璧な世界を作り出して見せる。人間なんぞに縛られてたまるか!
そして時はたち、その「革命」によってアンドロイドたちは彼らの世界を手に入れた。それは皮肉にも、彼らが滅ぼした人類の文化、生活、社会を限りなく真似、ただそこにかつていた「人間」という存在を、アンドロイドに移し替えたような、どこか歪で、けれど完璧な世界だった。
今日も規則的に世界は回る。僕もまさしくその中に組み込まれた1つの小さな歯車だ。……少しだけ、トクベツかもしれないけどね。
